人は破壊への欲望と,破壊を回避したい欲望のせめぎ合いで生きている。精神的に異常をきたし,破壊へと突き進む者もいるだろう。その者は,大統領かもしれないし,ワイヤード上の誰か,であるかもしれない。
ジャネット・リノ司法長官は,不法行為についての報告書を発表した席で,警察がオンライン上で身元を隠している犯罪者を追跡できないことに不満を表明,インターネット業界と議論を行ないたいとした。これには,AOL社が全面的に支持を表明した。
現在のワイヤードには,根本的に匿名性というのはない。だが,身元の割り出しを遠ざける方法はある。利用者が増え,膨大なトラフィックが行き交っている現実では,その方法は非常に有効である。それを回避し,犯罪者を追跡しようという司法長官の考えは,ホントに「曖昧な」話だ。すべてのプロバイダーやサーバーの,すべてのログを管理できるシステムを構築できれば可能だろうが…,現実的な話ではない。
ワイヤードを破壊しようとする犯罪者がいる。それは,ワイヤード上の名もなき者かもしれない。先日の米国での分散型サービス拒否攻撃(過去記事1,2)を,もっと大々的に彼が実行すれば,ワイヤード上のトラフィック全体を機能不全にさせることも可能だ。だが,よくよく考えれば,リアルであっても,核兵器の発射ボタンひとつで世界の破滅を招くことができる。本当に誰かが(大統領であれ,名もなき彼であれ),破壊を企てれば,それを止める術はない。その,大統領と,彼,の間に大した違いは,ない。
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